春の氷雨が鬱陶しい。
おりおり洩れて来るほのかな囁きが今夜も心を包む、施術が始まり少し反り身に翻弄されだした。サワコ女史のあらゆる部分が蠱惑に満ちてくるように感じ、背後から窺いされると鈴口からもう一筋で透明な物質が流れだし、その部位が成熟するほど妖艶さを増して、身を滅ぼしそうになる。
女史の唾液は滝のように音を立てて流れる。
やせ気味の体を仰向けに、ぺこんと腹を凹んだ状態で体を荒らし廻わされ何かが這入ってくりょうだ。
堅いものは曖昧な位置に放り出してところどころに露われている胸や脹脛や このポーズでいつも女史が私を誘惑する。
こう云う姿を見せられると私はあたかも餌を投げられた獣のようになる。女史が例のそそのかすような表情をして、じっとその部位を見下ろされてとうとう降参してしまう。
果てたあとは、眼球が眼窩の奥へ凹んだ気持ちになる。
胸の上へ、片肘を立ててその手の先を、あたかも撓んだ枝のように載せて、そして片一方の手は、ちょうど私が据わっている膝のあたりまで、しなやかに伸びて摩擦は感じなくなる。
綻びかけた花びらのように柔らかに握られ、その手頚には静かな脈の打っているのがハッキリと分かる。
鬱な表情をまだ何処やらに残しながら変に蠱惑的に私の心を掻き毟り、幾分胸騒ぎに駆られながら紅い握り拳をぎゅっと固めて前へ突出し、やおら体を擡げた女史は私の顔をチラと偸んで自分の肉体のあらゆる部分を知っているような立派に成熟するまでに随分さまざまの丹精を凝らし、私の中にある獣性が女史に征服されて、にもかかわらず私の獣性は盲目的に女史に降伏することを強い、総てを捨てて妥協するようにさせられる。
男子としての節操、潔癖、純情を捨て、過去の誇りを擲ってしまって、女史の前に身を屈しながら、それを恥じとも思わないようになってしまった。
女史はこの弱点を面の憎いほど知り抜いているのだろうか、ぺったり跪いて嘆願するように始めての劇は幕を閉じたが再会が待ち遠し。
蟻十